国平寺収蔵作品

東京都小平市にある<国平寺>。
この禅宗のお寺は韓国の五山のひとつである海印寺の系列で檀家さんのほとんどが在日朝鮮・韓国人です。

シリーズ: 十三佛

一般的に知られた<十三佛画>のほとんどは、十三体の仏を雲上に乗せた集合形で描かれたものですが、この<十三佛>は一体一体、仏様を別々に描きました。
それぞれの仏様と向き合うことで、初七日から三十三回忌まで、亡き人を偲ぶことができるようになっています。

国平寺の<十三佛>について

この十三仏のシリーズは、2004年5月26日<花祭>の際、東京都小平市の<国平寺>に奉納されました。
この禅宗のお寺は韓国の五山のひとつである海印寺の系列で檀家さんのほとんどが在日朝鮮・韓国人です。
私はこの<十三佛>を描き始めるにあたって各仏の図像に高麗仏画の特徴を取り入れ半島の香りを残そうと思いました。
十三佛中、特に際立ってそれが表れているものは地蔵菩薩と弥勒菩薩です。
その他の仏画にも私なりに色彩や構図、模様に工夫を凝らしました。
これから何世代にも渡って日本の土地に同化していく在日の子孫達にとって、国平寺の<十三佛>が自分たちのルーツを思い出す一つのきっかけになってくれればと願っています。

地獄・極楽

シリーズ: 華
シリーズ<華> について

ブッダは、極楽浄土の池に咲く蓮の花は青、黄、赤、白など実に鮮やかで香しく、車輪のような大きさである、と弟子に説きました(『阿弥陀経』より)。

このシリーズ<華>は、白蓮、浅緋蓮、黄蓮の順に、現在「涅槃図」の右側面の壁に飾られています(青蓮は本堂の「天女図(陰)」の中に)。
この<華図>を描くことになった動機は、先に安置された「涅槃図」の場が広く、やや絵が寂しげに見えたため極楽浄土の蓮の花を添えて涅槃のイメージを盛り上げたいと思ったからです。

そのような中で出会った素材は、植物の繊維が大胆に漉き込まれ、サクラの花で淡く染色された 2m × 1m の手すき和紙でした。
このサイズは職人が一人で漉ける最大の大きさだそうで、和紙には作者名や『雲流』というタイトルもついてました。
私はこの和紙を見た瞬間に、強く浮き出た繊維がちょうど葉の葉脈を表すのにピッタリだと直感し創作意欲をかきたてられました。
素材との出会いがシリーズ<華>誕生のきっかけとなったのです。

シリーズ: 天女

涅槃図
<涅槃図>について

涅槃とは、煩悩の火が吹き消された状態の安らぎや悟りの境地をいいますが、同時にお釈迦さまの入滅にゅうめつ(死去)のことも意味します。
お釈迦さまはインドのクシナガル郊外の林の中で、一対の沙羅双樹さらそうじゅの間に横たわり、菩薩や弟子たちに見守られながら2月15日(旧暦)に涅槃に入られました。
そのときこの樹は季節はずれの花を咲かせ、お釈迦さまを供養したといいます。
また、東西南北の沙羅双樹がお互いつながり一樹となり白鶴のように白く変化したとも伝わっています(大涅槃経後分より)。
<涅槃図>とはこのような場面を描いたものをいいます。